08年5月13日(火)
アートdeArtU(7)“触感的”に「人間の営みは自然の創造物」――岡 普司展/京都アートマップ2008e001_artde)アート de Art
京都の現代美術系ギャラリーによる一斉企画展京都アートマップ2008が始まりました。サブテーマ<京都美定書>には、「京都議定書」が温暖化防止へ世界を動かしたように、美術と社会との関わりを発信しようとの思いが込められています。
さっそく、ギャラリーアーティスロングに岡 普司展<MASSIVE PROGRESSION/熱塊と水蝕>を訪ねました。切り株のようなオブジェと石。…岡さんは、牛乳パックを使って紙の原料である樹木を再現しようと考えたそうです。石は川の水流によって磨かれたもの。ここは<水蝕>の部屋です。
<熱塊>の部屋には、ガラス質の結晶が光る能勢黒(のせぐろ)という花崗岩。再生ダンボール、ハゼの実から採れる和ろうそくの材料を使ったオブジェ。「熱」が形成に役割を果たします。
…人間は身近な自然から抽出した物質で暮らしてきたし、地球全体としても熱や水の循環によってバランスが保たれてきた。ところがいまや人間の活動は自然の限界を超えてしまった。「時間をかけて自然が形づくってきた過程を『見せる』ことで、過剰になりすぎた社会のあり方を問い直せれば」と岡さんは言います。
岡さんの作品には「人間の手」の痕跡がつよく存在します。
「文化=耕す」という語源の通り、太古の昔から人間が自然に働きかけ抽出してきた、木、紙、石、鉄などの物質。自然は変化し果実も巨大になりました。
けれどその人間も、自然から独立した存在ではなく、他の生物と同じように「自然との物質代謝(循環)」を行なっています。ところが、生産と消費の際限なき拡大を自己目的とする「怪物=資本主義」が現われ、「自然との循環が撹乱」されつつあると、マルクスは『資本論』で分析しました。
…「人間の営みも自然の創造物なんだ」ということを“触感的”に喚起する岡さんの作品。
静かな口調で、けれども、つよく。
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作品を介し、いろんな出会いが広がるのがギャラリーです。「アートマップ」は参加ギャラリーで入手可能。…風薫る5月、ぜひ足を運んでみて下さい。
*岡 普司展<MASSIVE PROGRESSION/熱塊と水蝕> ギャラリーアーティスロング(中京区三条通堀川西入一筋目角 075-841-0561)
*「京都アートマップ2008」5/13〜25(事務局:ヴォイスギャラリーpfs/w 075-211-2985) 〔参加ギャラリー〕ヴォイスギャラリーpfs/w/ギャラリー恵風/アートスペース虹/ギャラリーすずき/ギャラリーはねうさぎ/ギャラリー16/ギャラリーアーティスロング/ギャラリーマロニエ/ギャラリーなかむら/同時代ギャラリー/ニュートロン/立体ギャラリー射手座/ギャラリーギャラリー
★『京都民報』5/18付「成宮まり子のアートde Art」掲載