08年4月17日(木)
地球温暖化防止と「排出権取引制度」、そしてマルクス2008
地球温暖化について気候ネットワークの2回のシンポジウムに参加するなかで、「排出権取引制度」の持つ意義について、興味をそそられています。
けれど、「温室効果ガスの排出権を“カネ”で買うなんて、どうなんだろう?」「カネ持ち企業や国が排出権を買い占めてしまったら、温暖化防止につながらないのでは?」という心配の声もあります。
…いろいろ探していたところ、2007年11月9日の『しんぶん赤旗』に掲載された友寄英隆さんの「地球環境とCO2排出権市場」という論評が目に留まりました。
友寄さんは、「排出権取引」のしくみは通常の市場とは異なり、取引市場が動き出すためには国が温室効果ガスの削減目標を決め、その排出枠(上限)を個々の企業に割り当てることが前提である。…それは、排出の「権利」とともに「削減義務」を企業に課すことだ、といいます。
「排出権取引」を提起した京都議定書(1997年)の後、EUでは「2020年までに20%削減(90年比)」という目標のもと、05年1月に欧州排出権取引制度(EU・ETS)を発足させていること。一方、日本では「排出枠を行政が決めることは官僚統制を招き、企業の自主性を阻害する。…衡平な排出枠の割当を行なう仕組を構築するのは困難」と制度創設に反対している財界や、政府の姿勢が批判されています。
続いて友寄さんは、「排出権取引市場の動向は、現代の経済学にとってたいへん興味深い理論的課題を提起しています」として以下のように述べられています。
―排出権取引制度は、国家による「規制のルール」と「市場の競争原理」を組み合わせる点に特徴があります。国家による「計画の機能」と資本による「市場の機能」とを結びつける実践的事例の一つといってよいかもしれません。
―たしかに、排出権が市場でいくら取引されても、それ自体はCO2の削減を意味するわけではありません。大事なことは、個々の企業が公的に確認されたCO2削減の目標と排出状況を公表し、責任をはたすことです。…途上国を含めて国際的枠組みを強化し、決して「金持ち国」や「金持ち企業」が削減義務を逃れる抜け穴にならないようにしなければなりません。また投機的資本の市場にならないようしっかり監視して、理論的政策的にも制度のあり方を研究・発展させていくことが必要でしょう。
…なるほど〜!「市場に任せればすべてOK」でなく、「計画」や「規制」の機能をきちんと果たせるように、制度を進化・発展させていかなければならないってことですね。
さらに、友寄さん。
―マルクスの『資本論』は、資本の活動が自然と人間の間の正常な物質循環をかく乱し、自然を破壊すると指摘しています。マルクス経済学は、資本主義のもとでは、労働者が搾取され貧困が累積していくことと、際限なく自然が奪いつくされ破壊されていくこととを統一的にとらえて、その両方のゆがみを根本的に正していく社会をめざしています。
―21世紀は、「地球環境を守る経済学」としてのマルクス経済学の真価が問われている世紀といえるでしょう。
…短い文章ですが、大事な中身が凝縮されています。自然と人間との物質代謝、資本主義、マルクスがそれらをどんなふうに捉えていたのか、もっと学んでみたいと感じました。