08年1月23日(水)
アートdeArtU(4)ガツンとした石彫―佐野賢さんのことe001_artde)アート de Art
西京区洛西ニュータウンの新林池公園に「認識のキーボード」という彫刻があります(写真左)。鍵盤の上に「時間・空間」「水・空気」「大地・風」のイメージが刻まれたこの作品は、彫刻家・佐野賢さん(京都市立芸大教授)の手によるものです。
近くのふれあいの里(西京区・写真下)や、京都会館(左京区)、墨染通り(伏見区)、京阪奈プラザ(精華町)、大宮町ふれあい工房(京丹後市)など、各地にある石の佐野作品。なんといっても野外が似合います。
「作品が季節の風にさらされ、雨が洗い流す。落ち葉が積もり凍てつくことがあっても、自然との対比のなかで物質としての存在が成り立つ」と佐野さん。
実は、最初は石をやるつもりではなかったとのこと。大学卒業後に彫刻家をめざしたとき、休耕畑を借りて石彫を始めたのがきっかけで、それから約40年。「石にはガツンとした質量感がある。手間はかかるし制約はあるけれど、あいまいさやごまかしは効かない」と石の魅力を語ります。
石の佐野さん≠ニいえば、アトリエ棟にカチンカチンと響く音。汗を拭き拭き大学で制作する姿。「ああ、今日も佐野さんやってるな」と、私の学生時代にも名物≠ナした。「教員と言ったって、僕らも一人の作家やからね。教えるというより、作品が出てくる過程がある。そこを学生諸君に伝えたい」…その姿は、かつて美術の教育カリキュラムはいかにあるべきかと議論された実践そのものだったのではないかと思います。
そして、構想設計という新しい美術表現をめざす専攻で、個性的でバラエティに富んだ試み(と云うと聞こえはいいのですが)をしでかす学生(私を含め)に、柔軟にあたたかく向き合ってこられた先生。
退任後の構想は?とお聞きすると、「煩わされず好きな仕事をやりたい。日本人、人間の本質に触れるような、現代のみならず次代にも通じるようなモノをつくりたいね」との答えが返ってきました。
*佐野賢展―京都市立芸大退任記念 1月30日まで:芸大ギャラリー(西京区大枝 075‐334‐2220)
★『京都民報』1/27付「成宮まり子のアートdeArt」