07年5月17日(木)
アートdeArt(19)「アール・ブリュットの顔」――魂の叫びe001_artde)アート de Art
ギャルリー宮脇の「アール・ブリュットの顔」展。60点を超える作品はどれも特別な濃密さです。
カラフルなロボットのような肖像が繰り返し登場するのはポール・デュエム(ベルギー)の作品(写真左)。農夫だった彼は保護施設で70歳の時から毎日規則正しく描き始めたそうです。
ローゼマリー・コッツィ(ドイツ)によるドローイングは、ドキリとするような眼差しと不自然に首や手足が折り曲げられた人物(写真下)。ナチス強制収容所生活を体験し、幼くして家族が崩壊した経歴のもち主です。
「アール・ブリュット」とはフランス語で「生(き)のままの芸術」を意味します。文化の影響を受けていない、精神の根源的な衝動から創造される芸術を指し、提唱したジャン・デュビュッフェだけでなく、ピカソやクレー、シュルレアリスムにも影響を与えたといわれます。
その作者は、心を病んだり、囚われの身だったり、ハンディキャップをもつ、日曜大工愛好家などの無名の人々です。孤独のなかで自分のためだけに制作され、死後に膨大な作品が見つかることも少なくありません。
近年は、美術の専門教育を受けていない人々や、既存の枠組みでとらえきれないものも含め、広い範疇で「アウトサイダー・アート」と呼ばれるようになっています。
「欧米では美術館での企画も多いが、日本ではまだ少ない。今回紹介したのは海外では有名な作家ばかり。ぜひ見てほしい」とオーナーの宮脇豊さん。
…なんと言えばいいのでしょうか。魂の叫びを聞いたような、驚きと衝撃が残りました。
*「アール・ブリュットの顔」6/2(土)までギャルリー宮脇(京都市中京区寺町二条上ル東側)TEL 075-231-2321
『京都民報』5/27付「アートde Art」掲載