07年3月 7日(水)
アートdeArt(14)文化に市場原理はなじまない――京都国立博物館調査からe001_artde)アート de Art
京都国立博物館などの独立行政法人化から5年。国会に出された文化財研究所との統合案をめぐって、井上哲士参議院議員の調査(2/28)に同行しました。
館内の文化財修復工房では、絵の裏打ち紙を水で少しずつ溶かしてピンセットで剥がしていく作業を見学。1日がかりで10cm角くらいしか進まないそうで、仕上がった絹本の仏画は20ヶ月かかったとのこと。仏像修復では、三十三間堂千手観音像を、一巡すればまた最初からと半世紀以上も続けているそうで、気の遠くなるような作業ですが、「次の世に引き渡す」という話が印象的でした。制作当時の色・形の復元ではなく、数世紀を経た文化財をこれ以上傷まないようにして後世に引き継ぐというのです。
続いて展示を見学。「数十年の研究を積み上げた展覧会ほど、入場者数は反比例する」とスタッフの方。長時間の説明に研究への熱意が伝わってきます。
独法化後、入場者が増えても財務省がノルマを引き上げ、運営交付金は削減に。文化財購入費がしわよせされて、価値ある文化財が海外へ流出しているそうです。「博物館の使命が果たせない。なぜ文化予算はこんなに少ないのでしょう」「大量客の大型企画ばかりやれない。質を落として遊園地のようになっていいのか」と館長さんら。
そもそも「市場原理」「効率」「競争入札」などを文化に持ち込むことが大問題です。…芸術文化は国民の権利。専門研究の保障や支援を!…今回の調査に同行して、私自身がこの仕事を国会でやりたい!との思いを、あらためてつよくしました。
(『京都民報』3/11付掲載「アートdeArt」)