06年12月 7日(木)
アートdeArt(8)大山崎山荘美術館のことe001_artde)アート de Art
好きな美術館は?と訊かれたら、私は大山崎山荘美術館を挙げたいと思います。
天王山山麓の斜面に高々とテラスを掲げるこの美術館は、大正から昭和初期に実業家・加賀正太郎が建てた山荘を修復したもの。大山崎町の新町長・真鍋宗平さんの案内で訪ねました。
モネの《睡蓮》も有名なのですが、私のお気に入りは民芸などの陶器コレクション。なかでも河井寛治郎、濱田庄司らとともにバーナード・リーチ作品に出会えることが嬉しい。
…香港で生まれ、日本やイギリスで育ち、工芸とは高貴なものではなく大地と暮らしに根差そうとする日本の民芸運動に出会ったリーチ。
同時に、リーチにはやっぱりイギリスの伝統が感じられます。西欧でガレナと呼ばれる伝統の器や、中世の遺品に似て姿もよく使いよさそうな白釉の水差しなど、思わず手にとってみたくなる、ぽったりとしたあったかさがあります。もともと絵描きだったリーチは、組タイル画もすばらしく、詩や物語が浮かんできそうな雰囲気です。
その組タイルが置かれている大テラスから三川合流点を眺望しながら、真鍋さんから、ここを一大観光地にするとか、山荘を棄て高層マンションを建てる計画がもちあがったものの、住民の運動によって山荘を残す方向が定まったという話を聞きました。
なるほど、山荘への細い道にも太い樹木が切られずに悠々と根と枝をはり、多くの人々が登ってきて、家族連れや子どもたちの声でにぎやかです。景観や文化を守るという住民の選択が、人々に支持されているんだなぁとあらためて感じました。(『京都民報』12/10付「アートdeArt」)