06年10月18日(水)
アートdeArt(5)棚田と鬼の里は元気。大槻博路展e001_artde)アート de Art
大江町在住の大槻博路さんの作品展は、その名も「鬼の里は元気」。ふるさとを描いた「棚田シリーズ」は、盛られた絵の具が田んぼの土そのもののようです。
米と酒米をつくる農民でもある大槻さんが、「棚田」を描き始めたは10年程前から。それまでは「画室シリーズ」としてアトリエの中を描いていたそうです。「今から思うと、東京や大阪という『都会』から戻ってきて、何を描いたらええのかわからんかったんやね」。…転機になったのは外国への旅。よその国から故郷を想い、帰郷して、そこに広がる棚田が日本の原風景だと気づいたといいます。
「田んぼの土を耕す、すると色が変わる。水を張り田植えをすると、またガラッと変わる。稲が育ち穂が出て、黄金色になる。…大地に、絵を描いてるんですよ」との言葉には、絵と同じように、自然と向きあう労働と根を張った生活の実感が滲んでいます。
そういえば、「文化」という言葉の語源は「耕す」であり、「搾取」の語源も自然に働きかけて成果を抽出するという意味だと聞いたことがあります。マルクスも『資本論』で「自然と人間との物質代謝」といっていましたが、自然に働きかけ変化させ、その成果を得てさらに人間と自然を豊かにする営みが、人間の歴史をつくってました。…だからきっと、絵を描くことと土を耕すことは深く繋がっているんですね。
大槻作品、タイトルも目を惹きます。「こんなはずでは…」「言うとったやろ!」「ほんまにその通り!」「明けない夜はない」…。意味を尋ねると、「まちを守ろうと運動してきたみんなの想いが凝縮されとるんや」。
その大江町では、そろそろ地酒作りが本格的になるそうです。“日本昔話”のような棚田と鬼と酒の里を、私もまた訪ねたいなと思いました。(『京都民報』10/22付「アートdeArt」)
*大槻博路作品展 10月23日(月)まで ギャラリーかもがわ(上京区堀川通出水西入ル上ル)