06年9月10日(日)
アートdeArt(2)“マンガ家の眼”e001_artde)アート de Art
「第七回京都国際マンガ展」(12〜24日京都市美術館)は、おおいに見ごたえありです。
パウェル・クチンスキーさんによるハトの作品は、「さすが金賞」とうなづきました。…暗い室内で車いすに座るハト。しかしその目にはつよい輝きが宿り、「再び、私が翼を広げて世界に羽ばたく時代を!」との意志が読みとれます。そこが肝心なところですね。ハトが登場する作品や作家はありますが、クチンスキー作品は、単に平和の象徴というだけでなく、踏みにじられながらもなお、その輝きを失っていない国連憲章や日本国憲法第九条の存在が、むしろ世界の人々の「希い」となる時代に入っている、ということまでを連想させると感じました。
さいとうあやこさんの、『ハーメルンの笛吹き』を題材にした作品にも注目しました。ねずみ退治をした笛吹きに約束の報酬を渡さなかったために、村中の子どもたちが連れていかれたという童話。さいとう作品では、軍服兵士の後に無邪気な笑顔の子どもたちの行列が続きますが、その道はいったいどこへ続くのか…。実は私もこの話をテーマにした作品を、軍国主義への警鐘という意味をこめて発表したことがあります。いま、「戦争する国」「憲法と教育基本法改悪」という問題がするどく問われるなかで、意味の深い表現だと感じました。
また、特別展示の審査委員長マーティン・ハネセット氏による「日本見聞録」も、さすがです。山紫水明の国土を政治家やゼネコン業者がブルドーザーで踏みつぶし、コンクリートと公害の都市に変えていく「土建国家」は痛烈です。鴨川の桜の下で浮かれる人々とそこに棲むホームレスとの対比を描いた「お花見」や、「葵祭り」「鴨川でトンビに餌をやる」という「京都」を描いた少々意味深な連作など新鮮。
全体を通して“マンガ家の眼”のおもしろさとするどさ、そして平和への真剣さを感じとれると思います。“マンガ家の眼”あなたもをぜひ体験してみて下さい。 (『京都民報』9/10付「アートdeArt」)