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10年6月 2日(水)

まり子を語る7 彫刻家・芸大名誉教授 佐野賢さんまり子を語る 文化・芸術

自由な精神、やさしさ、思いやり、生命力(5月23日励ますつどいでのお話)

 成宮さんが京都芸大の「構想設計」専攻の修士課程、造形構想という専攻を終了されて、そのときに専任でゼミを担当していました。「構想設計」という変な名前は皆さんあまりご存知ないかもしれませんが、日本画とか油絵とか彫刻とか陶器とか、そういう表現の技術とか、基礎の方法論だけではなくて、現代に成り立っている美術の問題を総合的に研究して展開しよう、という専攻です。何よりも自由で、何よりも批判精神のある、判断能力のある、そういう学生がやらないと展開できません。成宮さんは早くから社会的、あるいは政治的なこととの関係で自分の表現をテーマにして扱ってきた。そういう姿が非常に印象に残っていまして、修了時には山口華楊賞の奨励賞をもらって、ずいぶんユニークな仕事をされた。今で言う美術表現のインスタレーションという言葉がまだできてなかった頃です。僕の記憶では木の電車をたくさんつくって、それがずっと並んで、そういう美術館で制作していたんですが、そういう表現の方法もその当時としては具体的に誰もしていない、非常に作家としてもいいセンスをもっているなと注目していました。イメージとか、人に対しての思いやり、やさしさ、物質に対して生命力を感じる―そういう良さがないと作家としては展開できない。そういう点では彼女は非常に人に対してのやさしさももっているし、人の話もよく聞く。そういう点で「造形構想」の中から1人ぐらい政治家が出てもいいかな(笑い)。それも自己表現の1つだと思う。表現の方法は男女にこだわらないのがわれわれの専攻の教育方針ですから、こだわりなしにどんどんと自由にやってほしい。われわれの専攻のおもしろさの1つ、一番基本的なことは、人の基準をあてにするな、要するに自分で自分のことを切り開いて責任をもつ。そこには何よりも自由でないといかん。それに対して批判精神が。中国で世の中が乱れた時代の『戦国策』という本に、「愚者は成事に闇く、智者は未萌に見る」という有名な言葉があります。普通の人は今、起こっていることを分析して理解できる。そこそこ勉強をしている人はそれを基準にして先のことを考えられる。それは美術表現も同じです。そういうことも含めて、とにかく応援しますから、がんばって、政治家としても作家としても輝いてほしい。

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